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〔トゥデイ〕誕生秘話 アートディレクターロングインタビュー

2015年版から始まったタッチアンドフローのダイアリー〔トゥデイ〕も、皆さまにご愛用いただき、今年で9年目を迎えました。もっと皆さまに〔トゥデイ〕のことを知っていただき、より身近に感じていただけたらと思い、タッチアンドフローの製品をデザインしているアートディレクター(以下AD)に、〔トゥデイ〕の誕生秘話やおすすめポイントについてのインタビューをしました。ぜひ、最後までお付き合いください。

『たいせつな「今日」のためのダイアリー』
STAFF:本日は、よろしくお願いいたします!早速ですが、今回のインタビューでまず一番に聞きたいと思ったのは、“TODAY〔トゥデイ〕”の名前の由来です 。この名前には、どのような思いが込められているのでしょうか?

AD:Diary(ダイアリー)の語源は、「1日の記録」という意味のラテン語だそうです。「昨日」を振り返り、「今日“TODAY”」を記録し、「明日」を展望する。そうして季節が巡り、やがて1年が経って・・・もし、1日の記録を積み重ねていくことが生活であるなら、その起点となるのはやっぱり「今日」なのではないか・・・そんな思いで、タッチアンドフローのダイアリーを “TODAY〔トゥデイ〕”と名付けることにしました。

STAFF:めぐる季節の中で過ぎていく「今日」を大切に・・・TODAY〔トゥデイ〕。素敵な名前ですね。

AD:はい。『たいせつな「今日」のためのダイアリー』というのがキャッチコピーになっています。ところで、ビートルズのYesterdayも、ミュージカル「アニー」のTomorrowもいい歌ですけれど、果たしてTodayという楽曲はあるのかしら。

STAFF:そうですね・・・アンジェラ・アキさんのTodayがあります。とてもいい歌詞ですよ!

『名前はスペックよりもムードやポエジーを体現するものであって欲しい』
STAFF:さて、次は、ダイアリーをデザインしたときのエピソードを教えてください。

AD:実は名前をどうするかも、侃々諤々(かんかんがくがく)ありました。ダイアリーは月間や週間なのに(つまり1日1ページではないのに)いったい「今日(TODAY)」ってどういうこと? というような、至極真っ当なご意見もあって・・・(笑)

STAFF:熱いミーティングの風景が目に浮かびます。

AD:タッチアンドフローの他のアイテムもそうなんですけれど、名前はスペックよりもムードやポエジーを体現するものであって欲しい。話し合いの末、最初の質問に対する答えのとおり 、 “TODAY〔トゥデイ〕”でいく ことに決定しました。時の移ろいを表す月相マークや、週間ダイアリーの巻末付録に二十四節気のコラムを付けているのも、たいせつな「今日(TODAY)」を感じるきっかけになれば、と思ったからです。

STAFF:タッチアンドフローらしさ・こだわりのモノ作りのために、議論を深めるのって必要ですよね。

AD:揉めたことと言えば、印刷色についても一悶着ありました(笑)。印刷色がチャコールグレーなのはいいとしても、日曜・祝日(ぼくたちは赤日と呼んでいます)には色をつけた方がいいのではないか、という議論です。

STAFF:たしかに、祝日に色がついたダイアリーはよく目にしますね。

AD:その方が製品として見た目も華やかになるし、グレートーンだけではたしかに地味です。でも、ダイアリーでいちばん目立って欲しいのは、自分が書いた文字色や着彩した色なので、あえてダイアリーそのものは絵画における白いキャンバスのような存在に徹したいと考えていました。印刷色のチャコールグレーはもちろん、赤日に敷いた背景色(チャコールグレーを薄くした色)も控えめ、必要最小限の濃度に設定しています。

STAFF:なるほど。優しいトーンだからこそ、万年筆やボールペンで書いた文字がよく映えるのですね。シンプルなフォーマットなので、デコレーションにも向いていると感じました。

AD:その他にも、Gill Sansの書体で組んだタイポグラフィ(使用書体についてはこちらもご覧ください)、グリッドシステムに基づくレイアウト、罫線の太さ細さ、月や週のインデックス表示など、ここちよいと感じる塩梅を探りながら、細部をていねいに作り込んでいきました。

STAFF:小さなこだわりが、ここちよいダイアリーを形作っているのですね。次は、表紙とダイアリーの本文(ほんもん)についても聞かせてください!

AD:表紙に採用しているカラー紙は、タッチアンドフローを象徴するアイテムであるB6無罫ノート、〔デイリースケッチ〕の表紙と同じもの(色違い)です。いずれも、箔押しされたロゴとのコントラストが映える色合いを選びました。本文(ほんもん)に使っているオリジナル用紙も、〔デイリースケッチ〕と同じもの。1960年代に当社(㈱デザインフィル)が 開発して以来、改良を重ねている「MD用紙」です。万年筆インクでも裏抜けしにくくにじみにくい筆記適性の高さはもちろん、あたたかみのあるクリーム色は目にも優しい。ほんの少しのひっかかり具合と、書き味の滑らかさが絶妙なバランスです。

STAFF:どんどん書きたくなる、当社自慢のMD用紙ですよね!

『全てのフォーマットは出来るだけニュートラルに』
STAFF:苦労話も聞けたところで、次の質問です。ダイアリーのフォーマットもいろいろ出ていますが、それぞれのダイアリーの違いについて教えてください。ADの一押しポイントもぜひお願いします。

AD:大きく分けて、月間(Monthly)と週間(Weekly)があります。詳細はオンラインショップに載っているのでそちらに譲りますが、ポイントだけ簡単にご説明するとこんな感じになります。

【B6月間】 最もベーシックでシンプルな月間ブロックダイアリー。1日1マス。たったの32ページ。
【B6月間+メモ】月間ブロックと背中合わせに見開きメモページを挿入。メモ付ダイアリーのミニマルな形かも!? 64ページ。
【B6月間フリー】月間ブロックだけど 、日付を自分で書くのでスタートする日は自由。もちろん今日からでも!
【B6週間】レフト式。左ページはAM/PM/夜の3段レイアウト、右ページ端に「今日」のひとこと。巻末付録も充実。
【B7月間】B6のハーフサイズ、とてもコンパクト。1マスが小さいので、大事なことしか書けないけれど、それでいい!
【A5月間】B6よりも広々とした筆記スペース。1マスが大きいので、たくさん書きたい人、デコレーションしたい人向き。

新製品のA5月間以外は、もちろん全部使ってみましたが、それぞれのよさがあると感じています。ぼくはいま、仕事用にB6月間を〔フラットスケッチ〕に入れて持ち歩き、プライベート用にB7月間を〔ミニスケッチ〕に入れて趣味手帳として普段使いしていますが、2023年はA5月間を家族用(家族カレンダーみたい)に使ってみようかな、と目論んでいるところです。

STAFF:仕事用、趣味用、ファミリー手帳、カレンダー代わり・・・サイズが増えたことで使い方のアイデアがどんどん広がりますね。

AD:あと、先ほどもお伝えしたとおり、すべてのフォーマットはできるだけニュートラルになるよう、注意を払いました。ご購入いただいた方はおそらく毎日、場合によっては日に何度も、このフォーマットに向き合うはずなので、「自然で嫌なところがない」というのはとても重要だと思っています。

STAFF:・・・と言いますと?

AD:ぼくの敬愛する書体デザイナーであるアドリアン・フルティガーさん(Adrian Frutiger、スイス人、2015年死去)は、「スープを飲んだ後、使ったスプーンの形がありありと思い出せるようなら、そのスプーンのデザインは悪かったということだ。」と言っています。

STAFF:なるほど!だから出来るだけニュートラルになるように意識しているのですね。

AD:日常生活で目にするグラフィックや、身の回りにあるプロダクトデザインの有り様を、鋭く平易に語った言葉ですね。飽きずに長く愛用しているものって、一見するとなんてことのない姿形なのかも。だからもし、「このダイアリーは何だかとても普通だな……」と感じていただけたなら、最高の褒め言葉、とてもうれしいです。

STAFF:私・・・今、ダイアリーのデザインにとても哲学を感じています。

『現行品と変えないことが最大にして唯一のこだわり』
STAFF:さて、B6サイズ発売にはじまり、B7サイズ、そして今年は待望のA5サイズが発売されました。A5サイズのこだわりポイントなどを教えてください。

AD:A5も、現行品のB6やB7と文法はまったく変わりません。ですから「現行品と変えないこと」が最大にして唯一のこだわりと言えます。いまもしB6月間をお使いでしたら、A5月間へはスムースに(フォーマットの違和感なく)移行いただけるはずです。

AD:実はB7では、版面が小さいので筆記スペースを1mmでも多く確保するために、日玉(日付の数字のこと)をはじめとしたフォントサイズを、B6よりもほんの少しだけ小さくしています。一方A5では、版面が大きくなったからといって、フォントサイズは大きくしていません。B6と同サイズです。視認性を考慮しても、大きくする必要がないからです。そのため、ちょうどB6とA5のサイズ比率分、1マスの筆記スペースが約3割大きくなっています。
また、一般的にA5はノートでいちばん多く世の中に存在するサイズです。そういう意味では、馴染みのあるサイズと感じてくださる方も一定数いらっしゃるのではないでしょうか。

STAFF: 店頭では、以前よりB6よりももう少し大きいサイズがあればとご要望をいただいていました。私も学生時代はA4やB5を使っていましたが、大人になってからはA5を使うことが多くなりましたね。そのほか、おすすめポイントはありますか?

AD:普段お使いのノートに付け加えるように、〔トゥデイ A5〕をご愛用いただけたらいいなと思います。ちなみにタッチアンドフローでは、〔トゥデイ A5〕と同時発売で、レザーカバーの〔A5 スケッチ〕や、64ページの薄型ノート〔デイリースケッチ A5〕もあります。3つ揃えば、予定もノートもしっかり書きたい方のためのA5ダイアリーセットが完成です。よろしければぜひ。

STAFF:あっという間でしたが、最後に〔トゥデイ〕をご愛用いただいている皆様へ、ひとことお願いします。

AD:デコレーションを楽しんで気分を盛り上げる人、趣味の探究や習い事の達成に向けてひたすら記録する人、ビジネスツールとして予定を乱暴に書きなぐる人、たまに訪れる記念日だけをマークしておく人、日記のように楽しかったことや「今日のわたし」を綴る人・・・人それぞれのダイアリーがあっていいと思います。Googleカレンダーのように便利な機能はないですが、ダイアリー“TODAY〔トゥデイ〕”はきっと、あなたの人生を少し豊かにしてくれるでしょう。Write the world! (世界を書こう)

STAFF:たくさんのお話、ありがとうございました!

いかがでしたでしょうか。シンプルだけど細部までこだわりぬいた、でも、さりげないデザイン。わたしたちスタッフも初めて聞くような話もあり、よりダイアリー〔トゥデイ〕が愛しくなるようなインタビューになりました。皆さんの、たいせつな「今日」を記録するダイアリーが〔トゥデイ〕であったら、わたしたちも嬉しく思います。
それでは、皆さんの2023年ダイアリーが、たくさんの素敵な出来事でいっぱいになりますように!
(インタビュー日:2022年8月5日(金))